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鉄を削る
町工場の技術
ちくま文庫
小関智弘
日本の最先端技術を基礎からささえる町工場。
その町工場で旋盤工として50年間、働きつづけてきた著者が、
知恵に裏づけされた職人技と、粋な職人魂をいきいきと描き出す。
世界にも通じる日本の町工場の技術とそこに暮らす人びとの姿から
不況を生き抜く術が見つかるか?!
解説 関満博
美術系の学校に通っているわたしの次男が、自室にこもって、
なにやら木のかたまりを削っていたことがある。
鑿や彫刻刀を使う音が深夜まで続き、
何日か経って二階から降りてきた彼は、
寝酒を楽しんでいるわたしの前に、ふたつの木のかたまりを置いた。
木目がなければ、河原にころがっている石ころのようにも見えるが、
エロティックともいえる窪みがあったり、土人形を思わせる安定感もあった。
抽象的な造形の美しさというものは、じっと見つめているうちに、
いつの間にか、自分はもうずっと以前からこの形を知っていて、
しかも心から好きだったと錯覚させてしまうような力を、内側にひそめている。
わたしはそんな気持ちを抱いて、ほうとかふんとか言いながら眺めた。
親のわたしを追って工場に入る息子はいない。
それでもともかくこの息子だけは、モノを作る世界で生きようとしている。
深夜の酒がそんな感慨をふくらませて、
わたしはその抽象的な木彫に見とれた。
(本文「これまでの旋盤とNC旋盤 ハンドル捌きが自動化された」より)
鉄とのコミュニケーション
いい音、澄んだ音
銅の色・ステンレス鋼の色
キリコの形と色...その他
手で獲得する人生
熟練への玄関口
壁紙も鉄も伸びる
左甚五郎の鉋
やわらかな技術
水のなかにドボン
手配師の誤算
釣竿を削る
ハンドルのない機械
これまでの旋盤とNC旋盤
NC入門
わたしの職業訓練大学
技術の“いま”
熟練の意味
芯出しをめぐる技術
職場がいきいきとするとき
540円(税別)
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