司馬遼太郎 旅のことば
朝日選書
朝日新聞社編
「濃厚な味わいがここにある」
司馬遼太郎の文章には詩がある。箴言がある。
「街道をゆく」から編んだ旅のことばの数々。
あらためて出会う、美しいものへのまなざし、人を見つめる目、
風景の見かた、文明への洞察。
この詩篇をきっかけに、「街道をゆく」全43巻にはじめて出会うのもよい。
立ち帰るのも愉しい。
旅とは初対面の印象を得るためにするものだし、
このあとどんなに素晴らしいものを見ても、
最初の印象のういういしさには及ばない。
(23巻 ポルトガル人・人と海)
千鳥ケ淵の茶店の老婦人
被女は、人影のない水辺でオデンを煮ていた。
ちょうど南画の山水の人物のようで、さびしげでもありつつ、
俳味のようなおかしみもあった。
(26巻 近江散歩)
夏泊で海女たちに会い
彼女らは、私どもを追いこしてゆっくりおりてゆく。
存在感のしっかりした感じは、自分には技術と稼ぎがある、
という自負心によるものにちがいない。
(27巻 因幡・伯耆のみち)
第三者がその土地にやってくると、土地に共通した人間のにおいを感ずる。
においだけでは、その土地の文化とは言いがたいが、
においが愛嫡として感じられる場合に、そのにおいのもとこそ
その土地の文化であるにちがいない。
(27巻 因幡・伯耆のみち)
高知で飲みにゆく店を相談する
画家が自分の絵をならべて個展をするように、飲み屋というのは
あるじ自身の人間の個展なのである。
(27巻 檮原街道(脱藩のみち))
1000円(税別)
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