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旅館物語
オンリーワンの宿を夢見て
柴田書店
大野修
ISBN4388152978
規模を追いかけることが即、売上拡大と収益増大につながる
幸せな時代は、バブル経済崩壊によってもろくも崩れ去った!!
本書で取り上げた6っの旅館は、基本的に、バブル経済期までの潮流には
無関係だった。その最大の理由は、規模の戦いに挑むための資金力がなく、
立地条件にも恵まれていなかったためだ。
しかし、そのために潮流に流されることなく、自分たちがやるべきことを考え、
追求することができた。そこにしか活路がなかったのである。
規模の闘いで勝てないとしたら、同じことをやってもだめだ。
そこでしか味わえないもの、そこに行かなければ感じられないくつろぎを、
お客に提供するオンリーワンの宿をめざすこと。このことは本来、
旅館ビジネスの根本を成すテーマである。
唯一無二の経験ができるならば、お客はわざわざ選んで、そこに行くはずだ。
6つの旅館の物語は、そのことに挑戦した男たちの物語である。
(本書あとがきより)
◆80年代後半から90年代にかけて、多くの旅館に行き、
経営者に話を聞く機会を得た。たくさん見れば見るほど、
「ああ、ここは、あの旅館と似ている」と思うことが多くなった。
気持ちのいい温泉があって、清潔な部屋がありそこそこの味の料理がある。
温泉旅館に求められる最低限の要素はそこにあると思う。
あとはそれにどんな味付けをするかであって、それとても結局は、
そんなに違いはないのではないか。特に当時、主流だった、高層のホテルスタイルを
取り入れた旅館には、そんな印象を持っていた。その思い込みが変わるのは、
本書の最初に出てくる鹿児島県・妙見温泉の「忘れの里 雅叙苑」に
出合ったことによる。人気のある旅館だということは知っていたが、
訪れたのは平成7年が始めてだった。川沿いの坂道を下りる途中に、
鶏が散歩している。坂を下りきると茅葺屋根の古民家が木々の間に
建っている。囲炉裏小屋もある。まるで昔の日本の山村がそこに
残っているかのような光景だった。客室にはテラスがあって露天風呂がついている。
川を眼下にみるテラスからの風景は、インドネシア・バリ島中央部の渓谷、
ウブドのリゾートホテルのようだった。きっと雅叙苑のような、個性的な旅館が他にもあるはずだ。
そして、探しまわってたどり着いたのが、ご登場いただく他の5つつの旅館である。
どの旅館も泊まってみれば、その個性を体感できる。
長引く不況で宿泊業にも逆風が吹き荒れているが、これら6つの旅館はなかなか
予約がとれないほどに流行っている。人々に支持されるのにはそれだけの理由がある。
そこには21世紀に生き残るヒントがあるはずだ。それぞれの旅館が誕生するまでには、
どんな物語があったのか。彼らはどんな夢を持って、旅館経営に取り組んできたのか。
本書がその一端でも伝えられれば幸いである。
(本書まえがきより)
目次
忘れの里雅叙苑●鹿児島・妙見温泉
当てにしていた新婚客はまったく来なかった
どうすればお客が来るのかを考え続ける日々
山村の生活文化を再現するオンリーワンの宿へ
鶴の湯温泉●秋田・乳頭温泉
由緒ある鶴の湯を引き継ぐ
幸運の女神が露天風呂を与えてくれた
これからという時に火事で旅館が全焼
できる範囲で施設を拡大していった
花仙庵仙仁温泉 岩野湯●長野・仙仁温泉
飲み屋代わりから、日帰り入浴処。そして秘湯ブーム
母の病気を契機に、自分のめざすべき旅館像を模索する
シーズン、曜日に左右されない、一年中満室になる旅館
茶屋宿 花吹雪●静岡・伊豆高原温泉
企画プロダクション経営者からの転身
ターゲットは50代の女性
弁当事業の成功、そして撤退
森を生かし、共生することがテーマに
陶湶 御所坊●兵庫・有馬温泉
外に出ていくのではない。有馬に人を呼ぶことを考えよう
本館3階建ての古い建物を生かすリニューアル計画
自分たちの美意識を理解する人が来てくれればいい
御所坊を拠点に多彩な事業で有馬温泉とともに生きていく
木曽路ランド●長野・南木曽温泉
鉱山跡地を再利用するための観光事業
無駄に見えるスペースが差別化の鍵だった
ホテルの背後に広がる里山
成長するリゾート、木曽路ランド
旅館物語 オンリーワンの宿を夢見て 柴田書店 大野修
1400円(税別)
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