永遠の出口
集英社
森絵都
ISBN 4087742784
今もっとも注目される児童文学の旗手!
森絵都が贈る《大人への物語》
あの頃の私、〈永遠〉という響きにめっぽう弱かった。
青々とした10代。駈けぬけた少女の季節は想い出が
いっぱい『カラフル』の感動から5年。
始めて描く《大人への物語》!!
〈永遠の出口〉
私は、〈永遠〉という響きにめっぽう弱い子供だった。
たとえば、ある休日。家族4人でくりだしたデパートで、母に手を引かれた私が
おもちゃ売場に釘づけになっている隙に、父と姉が二人で家具売場をぶらついてきたとする。
「あーあ、紀ちゃん、かわいそう」
と、そんなとき、姉は得意げに顎を突きあげて言うのだ。
「紀ちゃんがいない間にあたしたち、すっごく素敵なランプを
見たのに。かわいいお人形がついてるフランス製のランプ。
店員さんが奥から出してきてくれたんだけど、紀ちゃんはあれ、もう永遠に見ることがないんだね。
あんなに素敵なのに、一生、見れないんだ。永遠に−。
この一言をきくなり、私は息苦しいほどの焦りに駆られて、そのランプはどこだ、店員はどこだ、
と父にすがりついた。おもちゃに夢中だった紀子が悪いと言われても、見るまでは帰らないと
半泣きになって訴えた。この広大な建物のどこかに眠る素敵なランプ。今、見なければ私は本当に、
永遠にそれを見ることができない。確かにそこにあるものを、そこに残したまま通りすぎてしまう。
それは私の人生における大きな損失に思えた。
(本文より)
■目次
第一章 永遠の出口
第二章 黒い魔法とコッペパン
第三章 春のあまぽこ
第四章 DREAD RED WINE
第五章 遠い瞳
第六章 時の雨
第七章 放課後の巣
第八章 恋
第九章 卒業
永遠の出口 集英社 森絵都
1400円(税別)