図説現代殺人事件史 河出書房新社 福田洋   図説現代殺人事件史
河出書房新社
福田洋

1946年〜2001年
小平事件、帝銀事件からメル友連続殺人、大阪池田小事件まで
「その瞬間!」を徹底検証。

殺人犯の9割りは、その瞬間「カッとなって」人を殺すのだが、
問題は一線を飛び越える原因、経緯である。
いわゆる、動機と呼ばれるものは百人百様だが、
各事件に通底しているのは、その時代と社会文化の影響であろう。
本書を通覧いただいた方々は、その背景に飢餓と虚脱、復興と成長、
繁栄と爛熟、崩壊と混迷を辿る日本の社会の変遷が、
かいま見えるはずだと確信している。
(「あとがき」より)

浅沼社会党委員長暗殺事件

(昭和35年)1960年10月12日、
浅沼委員長を襲う山口二矢元被告。
福岡美容師バラバラ殺人事件

1994年3月15日、
任意同行に応じて自宅を出る
江田文子元被告。
浅沼社会党委員長暗殺事件 福岡美容師バラバラ殺人事件
豊田商事永野会長惨殺事件

報道陣がとりまくなか、
永野会長が潜む部屋のドアを
椅子で叩く飯田元被告。
豊田商事永野会長惨殺事件

凶器を手に室外に出てきた
飯田(左)と矢野両元被告
豊田商事永野会長惨殺事件 豊田商事永野会長惨殺事件

報道陣の眼前で惨劇
八五年(昭和六〇)六月一八日午後四時半ごろ、永野会長は
大阪・北区にあるマンションの自室にひとりでこもっていた。
周辺には、いまや時の人である永野会長の行動をマークすべく、
約30人の報道陣が張り込んでいた。
人垣を分けて、2人の男が5階の部屋のドアの前に立った。
ゴマ塩頭で薄茶色のブレザーを着た男は飯田篤郎元被告(56歳)、
パンチパーマに黒ずくめの男は矢野正計元被告(30歳)であった。
ガードマンが誰何すると、飯田が凄んだ。

「名前なんかどうでもええ。鉄工所を経営しとるもんや。
永野に会いたいんや。開けんかい。お前ら、よう、
こんなやつのガードしとるな」


 驚いたガードマンは、電話で聞いてみる、
と言って階段を下りていった。報道陣の問い掛けに、飯田は声を荒げた。

「被害者6人から、もう金はいらんから、永野をぶっ殺せと頼まれてきたんや」

飯田は、報道陣からパイプ椅子を取り上げ、それでドアを激しく叩き始めた。
応答は、ない。矢野が玄関横の窓のアルミ桟を数回、力任せに蹴った。
2人は、折れた桟をはぎ取ると、窓ガラスを蹴破り、呆然としている報道陣を
尻目に、部屋に飛び込んだ。
矢野が持っていた黒い鞄には銃剣がしまわれていたのだが、
そうとは知らぬ報道陣には、本気で殺人を犯すつもりだとは思えなかった。
数分後、飯田が窓から出てきた。血まみれの銃剣を持ち、
服にも返り血が見てとれた。飯田は胸を張って、辺りを見回した。

「殺ってきた。おれが犯人や。警察を呼べ」

そう言うと、再び部屋に戻った。一帯は、騒然となった。
2、3分たって、2人が出てきた。飯田は、勝ち誇ったように言った。

「これで死んどらんかったら、また、やったる。87歳のボケ老人を騙しくさって、
850万円も取った奴やからな。当然の報いじゃ」



1600円(税別)




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