運命の足音   運命の足音
幻冬舎
五木寛之

迫りくる運命の足音。衝撃の告白的人生録!
−これを言ってしまわなければ死ねない、とずっと思っていた。−
戦後57年、旨に封印して語りえなかった悲痛な記憶。
驚愕の真実から、やがて静かな感動と勇気が心を満たす。

私は悪人である。十二歳の夏から五十七年間、ずっとそう思いつづけてきた。
しかし、悪人といっても、胸をはって堂々と広言するほどの大した悪人ではない。
真の悪人ならば、そこに逆転の救いもあるだろう。
だが私はしょせん、ちやちな小悪党であり、自分でわざわざ宣言するほどの
まともな悪人ではなかった。
戦後からずっとそのことが私の心に黒い影をおとしてきた。
小説を書きはじめて以来、何度その出来事を作品に書こうと考えたことだろう。
しかし、私には、母敦のことも、その他のことも、小説というかたちで
作品化することにつよい抵抗があって、書けなかったのだ。
私がいま、やっとそのことを書けるようになったのは、私の心の変化ではない。
「もう、書いていいのよ」という母覿の声が、最近、
どこからともなくさこえるようになってきたからである。
その声は私を許し、父親を許し、ソ連兵たちを許し、
すべての人間の悪を悪のままに抱きとめようとする静かな声である。
大悲、とはそのようなものを言うのかもしれない、とふと思う。
自分のこざかしい悪について語ることは、およそ恥ずかしいことである。
しかし、「地獄は一定」という言葉に私は押されて、このような文章を書いた。
「恥辱は一定」、すでに恥にまみれはてた自分ではないか。
無垢な少年ならともかく、これ以上なにを恥じることがあるだろう。
このことを書いてからでないと死ねない、と、長年、思いつづけてきた。
これを最後に、しばらくこのような文章を書くことはないだろう。
(本文「著者あとがき」より)

五十七年目の夏に
一枚の写真
許せない歌
遠景のなかの父
地獄はどこにあるのか

運命の足音がきこえる
深夜に近づいてくる音
幸田露伴の運命論
人ひどの心をとらえる超能力
...その他

新しい明日はどこにあるのか
見える世界と見えない世界
一瞬の「恥」や「畏れ」を抱かせる
マイナスとして働く宗教の力
...その他

命あるものへの共感から
いま根底から問われている人間中心主義
戦争の時代をのりこえて
「あいまいさ」を「寛容」として見る
...その他

運命の共同体としての家族
「働く女」としての母親像
「物語る」ことへの欲求の芽ばえ
敗戦直後に母を失って
...その他

1429円(税別)
運命の足音 幻冬舎 五木寛之 単価 1,429円 購入数

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