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砂の狩人 上巻
幻冬舎文庫
大沢在昌
ISBN 9784344406780
暴力団の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生!
警察庁の上層部は内部犯罪節を疑い、極秘に葬ろうとした。
この不条理な捜査に駆り出されたのは、
かつて未成年の容疑者を射殺して警察を追われた
<狂犬>と恐れられる刑事だった。
過激にヒートアップ、ノンストップ1200枚!
:幻冬舎創立8周年記念特別作品
お前は狂犬だ。
生かしたままくわえ戻ってこいといわれた獲物を咬み殺したのが、お前なんだ。
そんな野郎に今さら現場をかき回されてたまるかっていうんだよ。
(「本文」より)
「この事件には、公開されていない、ある重要な共通点があります。
もしそれが明らかになれば、もっと多くの血が流される可能性が高いんです」
西野は答えず、新たな煙草に火をつけた。ライターの火が一瞬、
窓辺から西野を見つめる時岡の姿を浮かびあがらせた。
「なぜそんなに頑張る?殺人なんて解決したところで、あんたの出世には
関係ない筈だ。俺みたいな厄ネタをひっぱりこむ方が、よほどまずいことになる」
時岡はすぐには答えなかった。
「わたしを西野さんがご存知なかったのは、研修のために
国外にいっていたからだと申しあげました。FBIにいました。
行動科学課というセクションで犯罪学を勉強していたのです」
「行動科学課・・・・・・・。ほしの心理を分析するって奴か」
「はい。もちろんまだわたしは半人前でしかありませんが、
それまでは警察庁には、そうした人員が配置されたことがなかったので」
「なるほど」
「この案件についての話を聞いていただけますか?」
時岡は訊ねた。
「戻ってきたあんたを俺は締めだせなかった。聞くしかないだろう」
西野は自嘲的につぶやいた。時岡は一瞬、傷ついたように沈黙した。
だが言葉を押しだした。
「二カ月で三件。そう、先はど申しあげました。
すべてが警視庁管内ではありません。神奈川県警が一件、含まれています」
「マル害は?」
「発見された順番に申しあげます。
四月十日が、畑野浩十九歳、無職。現場は、同棲している愛人宅のマンション。
次が五月七日、川地美保、三十二歳、主婦。現場は自宅マンション。
三件目が、六月二日、窪尻猛史、二十七歳、不動産会社勤務、
現場は自宅マンション、の三名です。
殺害方法は、銑利な刃物を使った刺殺。
凶器は共通するものである可能性が高く、現場からは見つかっておりません。
いずれの現場からも金品が失われたようすはなく、
あくまでも殺害を目的とした犯行であると判断できます」
「十九歳、三十二歳、二十七歳。現場の住所は?」
西野は訊ねた。
「畑野が、東京新宿区、川地が東京港区、窪尻が川崎市中原区です」
「凶器以外の共通点は?」
「二点、あります。まず第一は、いずれもマル害の咽頭部に
携帯電話が挿入されていたこと。電話はマル害の所持品で、
挿入は死亡直後におこなわれたと見られています」
「もう一点は」
西野は驚いたようすは見せず、先を促した。
「もう一点は......、」
(「本文」より)
686円(税別)
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