スプートニクの恋人 a weird
love story
講談社
村上春樹
ISBN 9784062096577
weird (とても奇妙な、ミステリアスなこの世のものとは思えない)
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。
広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。
それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し
片端から空に巻き上げ理不尽に引きちぎり、
完膚なきまでに叩きつぶした。
そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、
アンコールワットを無慈悲に崩し、
インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、
ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市を
まるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。
みごとに記念碑的な恋だった。
恋に落ちた相手はすみれよリ17歳年上で、結婚していた。
更につけ加えるなら、女性だった。
それがすべてのものごとが始まった場所であり、
(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。
¥1600(税別)
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