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町工場世界を超える技術報告
小学館文庫
小関智弘
「最終的にものを創りあげるのは人の手だ」
筆者はそう語る。
どんなに科学技術が発達しようとも、
研ぎ澄まされた職人の技を超えることはできないのだ。
そして、日本の町工場には、その職人の技が生き続けている。
未曾有の平成大不況の中、多くの町工場が倒産しているが、
職人技を武器にどっこいしたたかに生き延びている町工場も少なくない。
ある歌人は、職人を『太き指の神々』と呼ぶ。
産業構造が大きく変わろうとしている日本で、彼らの挑戦は続いている。
「バングラデシュに行きますとね、ホテルの庭先にも民家の戸口にも、
自然石を並べて飾ってあるんですね。ちょうど日本の植木や盆栽のように、
裕福な家なら立派な石を、貧しい家は小砂利なんですよ。
石を大事にするという感覚は日本人にはわからないでしょうね。
それで、わたしはどんな農家でも入っていってすぐ刃物を見せて貰うんですが、
どうしてこんなに切れない刃物を使っているんだろうと思うわけ。
材料が腰の弱い鋼で、ヤスリをかけると削れてしまうんです。
だから刃先は鋭くは作れない。
ああ、この国では焼き入れ技術ってものを知らないんだなと思いました。
それが大間違いでした。焼き入れして刃を硬くしたら、研げないんですよ。
研ぐ砥石がない。だから、研ぐ技術は一般化しないんですね。
ヤスリで削れる程度の硬さが、この国では限度なんですね。
そういう風土を無視して、技術レベルは語れませんね。
同じようなことはネパールでも見られます」
日本政府の海外技術協力の一環として、バングラデシュやネパール、
そして最近はケニアと通算七回も紛糾技術の指導に出かけた経験をもつ
岩崎重義さんは、その筋からは刀匠として知られる
三条(新潟県)の鍛冶屋さんである。
(本文「鉄を鍛える」より)
プロローグ 町工場の今/世界の注目を浴びて
第1章 工場は人が作る
第2章 鉄と共に生きる
第3章 “ひとり親方”がニッポンを支えている
第4章 どんな不況も乗り越えてきた
エピローグ 講演から/どんなに機械技術が進歩しても、機械は人間の道具です
小関さんと出会った夏 鷺沢萌
476円(税別) |