クレオパトラの葬送 薬師寺涼子の怪奇事件簿 田中芳樹  

クレオパトラの葬送
薬師寺涼子の怪奇事件簿
講談社NOVELS
田中芳樹

香港iこ向かう豪華客船上でのショーの最中、奇術師がバラバラになって
空中から落下。
さらに船室では3人の暴力団員の体が千切られた。
いわくつきの要人警護のため、この巨船に乗り合わせたのは
圧倒的な美貌と無謀を誇る警察官僚・薬師寺淳子警視。
特別待遇を堪能しつつ、狐絶した現場でますます本領を発揮!?


東京と横浜の灯がかさなりあいつつ遠ざかっていく。
光の雲だ。その上に黄昏が巨大な翼を投げかけている。
上へいくほど空は色濃さを増し、幾層もの色彩の円蓋(ドーム)が
メガロポリスをおおっていた。
視線を下へ向けると、黄金色と白銀色にゆらめく東京湾の波を、
巨船の航跡が2つに割っているのが見える。
香港へ向かう豪華客船「クレオパトラ8世号」の広々とした後部甲板に、
私はたたずんでいた。
私の名は泉田準一郎。警視庁刑事部参事官室につとめる警部補である。
その私がなぜ豪華客船などに乗りこんでいるかというと・・・・・・・・。
「泉田クン、なに不景気な表情してるのよ。絶世の美女といっしよに
豪華客船の旅。ユーウツになるシチュエーションじゃないでしょ」
 振り向くまでもなく声の主はわかっていたが、
だからといって振り向かないわけにはいかなかった。
だから私はそうした。
 3メートルほど離れてデッキにたたずんでいるのは、私の33年の人生で
出会った最高最上の美女だ。
短い茶色の髪が東京湾の潮風に揺れている。
白磁の肌に細く筋のとおった形のいい隆い鼻、生々とかがやく瞳、
淡紅色の端麗な唇。私ごときの描写力ではとても表貌できない。
ミラノ・ファッションのスプリングコートの裾からのぞく脚の線にも、
非の打ちどころがなかった。
彼女の名は薬師寺涼子。27歳にして警視の地位にあるキャリア警察官僚。
現職は警視庁刑事部参事官で、つまり私の上司である。

(「第一章 ドラよけお涼航海記」より)

著者のことば
 取材のため生まれてはじめて豪華客船いうものに乗ってみました。
いろいろ質問に答えてくれたスウェーデン人の船長さんに、
御礼のテレカを差しあげました。
垣野内成美さんがお涼と泉田クンを描いてくださったものです。
船長さんはいいました。
「おお、チャーミングなカップルだ。このふたりが船を沈めるのか」
ちょっとちがうんですけどね。まあ似たようなもんです。

740円(税別)
クレオパトラの葬送 薬師寺涼子の怪奇事件簿 田中芳樹 単価 740円 購入数

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