超薬アスピリン スーパードラッグへの道 平澤正夫

超薬アスピリン
スーパードラッグへの道
平澤正夫
 

超薬アスピリン
スーパードラッグへの道

平凡社
平澤正夫

アスピリンがドイツで開発されて百余年、
消炎・鎖痛・解熱剤として世界中で愛用されてきたこの錠剤が
心職病や脳卒中、大腸がんに効くことがわかったのは一九七〇年代のこと、
さらに近年になってアルツハイマー病や骨粗鬆症、糖尿病、
妊娠中毒など多様な病気への効果が認められようとしている。
その「超薬スーパードラッグ」にいたるまでの軌跡と薬効の仕組みを
知り、超薬をはばんできた日本の医療行政の問題点をさぐる。

ベネチアのシンポジウムで
四月下旬のベネチアは、冷雨に降りこめられ強風が吹いたりもして、
ことのほか寒く、水路ばたにつらなる屋台店で厚手のセーターをもとめ、
首をすくめて日をすごした。1997年のことだった。
観光にきたのではなかった。ドイツの多国籍製薬企業バイエルが
アスピリンの生誕100年記念の国際シンポジウムをベネチアで開催し、
縁あってそれにまねかれた。
草根木皮でつくる漢方の生薬ならいざ知らず、化学的に合成した医薬品が
100年の寿命をたもつのはきわめてめずらしいのではないか。
それもなんとか生きながらえているのとはちがう。
バイエルはシンポジウムの会場で、アスピリンの実績を数字で説明した。
「96年の売上げは8億3700万マルク(97年4月のマルクの対円相場は
74円)、前年比31パーセント増であった」
 アスピリンの化学名はアセチルサリチル酸。100年まえからの薬なので
特許はなく、だれでもつくれる。
「アセチルサリチル酸を有効成分とする薬の生産量は、
世界で年間4万5000トンに達した」
アスピリンの標準的な剤型は約300ミリグラム含有の錠剤である。
4万5000トンといえば世界の全人口60億人が、1人あたり平均して
1年に25錠のんだことになる。
にわかに信じがたい数量だが、おそらくアスピリンは世界最大の
生産量をほこる薬であろう。
 100年間つねに薬の王座にあったとはおもわないが、
これほどの実力と生命力の秘密や特徴は、まず第一にアスピリン自体がそなえている。
 はじめ、この薬は消炎(炎症を治す)、解熱(熱を下げる)、
鎮痛(痛みをとめる)の薬として用いられた。
1970年代にはいって、心筋梗塞や狭心症、脳卒中に効くことがわかった。
さらに80年代になって、大腸がんをはじめとするがんにも効くと、
動物実験や臨床試験、あるいは疫学調査の報告が相ついだ。
そしていま、21世紀の初頭、
アルツハイマー病、骨粗鬆症、糖尿病、妊娠中毒、歯科疾患、不妊などにも
効果があるのではないかと模索がなされている。
 つぎつぎと予想もしない効能がわかってきた。
たとえば、60年代まで、アスピリンは心臓に害があるという主張がかなり幅をきかせていた。
ところが、心筋梗塞の予防や再発防止に効くのだと、まさに逆転ホームランが出た。
(本文「はじめに」より)

目次
第1章 遅すぎた抗血小板薬承認
第2章 一〇〇年をふみこえて
第3章 がん予防にむかって
第4章 アルツハイマー病にも使えるか
第5章 副作用への対応
第6章 超薬をはばむもの

740円(税別)


超薬アスピリン スーパードラッグへの道 平澤正夫 単価 740円 購入数

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