キャッチャー・イン・ザ・ライ
The Catcher in the Rye
白水社
村上春樹
ISBN 4560047642
村上春樹の新しい訳でお届けする
新時代の『ライ麦畑でつかまえて』
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さあ、ホールデンの声に耳を済ませてください。
J・D・サンリジャーの不朽の青春文学『ライ麦畑でつかまえて』が
村上春樹の新しい訳を得て、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』として
40年ぶりに生まれ変わりました。
ホールデン・コールフィールドが永遠に16歳でありつづけるのと同じように、
この小説はあなたの中に、いつまでも留まることでしょう。雪が降るように、
風がそよぐように、川が流れるように、ホールデン・コールフィールドは
魂のひとつのありかとなって、時代を超え、この世界に存在しているのです。
さあ、ホールデンの声に(もう一度)耳を済ませてください。
母へ
こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、ぼくがどこで生まれたかとか、
どんなみっともない子ども時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が
何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパーフィールド的なしょうも
ないあれこれを知りたがるかもしれない。でもはっきり言ってね、その手の
話をする気にはなれないんだよ。そんなこと話したところであくびが出る
ばっかりだし、それにだいだい僕がもしそういう家庭の内情みたいなのを
ちらっとでも持ち出したら、うちの両親はきっとそろって二度ずつ脳溢血を
起こしちゃうと思う。そういうことに関してはなにしろ感じやすい人たちなんだ。
とくに父親の方がね。いや、うちの両親たちはいい人たちだよ。
そういうことじゃなくさ、ただやたら感じやすいんだってこと。それと僕としちゃ何も、
頭からそっくり自伝を話して聞かせようとか、そんなつもりはないんだ。
今から君に話そうとしているのはただ、去年のクリスマス前後に僕の身に
起こったとんでもないどたばたについてだよ。それは僕の具合がけっこうまずくなって、
療養のためにここに送られてくる直前に起こったことなんだけど、
実を言えばDBにだってそのその程度に話しかしてないんだ。
(本書本文より)
キャッチャー・イン・ザ・ライ The Catcher in the Rye 白水社 村上春樹
1600円(税別)