あかね空
文藝春秋
山本一力
ISBN 416320430X
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。
己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。
やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みながらも
やっと表通りに店を構える。
彼らを引き継いだ三人の子らの有為転変を、
親子二代にわたって描いた第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。
入魂の書き下ろし時代長編。
第126回直木賞受賞!
この作者には時代小説に対する覚悟がある。
それが熱となって読者を優しく包み込む。
平岩弓枝
「おふみがよう.......」
いわしを箸でほぐしながら、源治が話し始めた。
「あんたの豆腐が売れるようにの願掛けだてえんで、
俺の酒を断っちまいやがった」
あたまを外したいわしを、源治は丸ごと口に運んだ。
永吉も同じように煮付けを口にした。
「腹を立てても、いまさらあれは娘が勝手にいったことですなんざ、
お稲荷さんには言えやしねえ」
源治がぶつぶつとこぼした。
おふみは懸命に笑いをこらえていたが、
源治が睨むと真顔に戻った。
(本文より)
あかね空 文藝春秋 山本一力
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